特定荷主のCLOが10月末までに終えるべき5つの準備

はじめに

2026年4月の改正物流効率化法の全面施行により、特定荷主に指定された企業では、物流統括管理者(CLO)の選任と中長期計画書の提出が法律上の義務になりました。初回の中長期計画書の提出期限は、2026年10月末です。指定通知を受け取ったものの、何から手を付けるべきか整理しきれていない企業は少なくありません。本記事では、期限から逆算して、CLOが終えるべき準備を5つに整理します。結論を先に言えば、10月に入ってからの着手では間に合いません。データ収集と社内合意は9月末までに終え、10月は提出作業に充てる。これが現実的な段取りです。

前提:10月末までに何を、どこへ提出するのか

提出するのは「中長期計画書(様式第3)」です。物流効率化法第46条に基づき、特定荷主の指定を行った荷主事業所管大臣(経済産業省、国土交通省、農林水産省など、主たる事業の所管省庁)へ提出します。提出は原則としてe-Gov電子申請によるオンライン手続きです。

ここまでの経緯と、この先の期限を一覧にすると次のとおりです。

手続き様式期限
貨物の運送の委託及び受渡しの状況届出書様式第1前年度の取扱貨物重量が9万トン以上となった場合、翌年度5月末まで(初回は2026年5月末)。指定後、引き続き基準以上であれば再届出は不要
特定荷主の指定届出後、荷主事業所管大臣が指定・通知
物流統括管理者(CLO)の選任・届出選任届出書指定を受けた後すみやかに
中長期計画書様式第32026年度は10月末。2027年度以降は毎年度7月末(内容に変更がなければ5年に1度)
定期報告書様式第5初回は2027年7月末。以降毎年度7月末

注意すべきは、10月末という期限が初年度限りの経過措置である点です。本来の提出期限は指定を受けた年度の7月末であり、2026年度は指定初年度であることを踏まえて10月末まで延長されています。つまり来年の今頃には、次の定期報告(7月末)を既に終えている必要があります。10月末は「余裕のある締切」ではなく、「例外的に延ばされた締切」だと理解すべきです。

準備1:義務の全体像を、経営会議の共通認識にする

最初の準備は書類作成ではありません。中長期計画が単発の提出物ではなく、毎年の定期報告・国の調査・勧告・公表・命令と連動する継続的な制度であることを、経営会議の共通認識にすることです。

理由は2つあります。第一に、物流効率化の取組の実施状況が判断基準に照らして著しく不十分な場合、国は勧告を行い、従わない場合は企業名の公表や命令に進む枠組みが法律に組み込まれているためです。計画書は提出して終わりではなく、翌年度から実施状況を問われ続けます。第二に、CLOは「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある役員等」から選任することが求められているためです。制度は、物流を担当部門の実務ではなく経営課題として扱うことを前提に設計されています。計画の数値目標は、実質的に会社としての対外コミットメントになります。

具体的には、経営会議または取締役会で次の3点を確認しておくことを推奨します。すなわち、(1) 自社が第一種・第二種のどちらの立場で指定されたか、(2) 計画に書く数値目標の承認プロセスは誰が持つか、(3) 目標達成に必要な投資(設備・システム・人員)の判断をいつ行うか、です。この確認を経ずに実務担当者が計画を書き始めると、提出直前に役員から差し戻され、期限に間に合わなくなります。

なお、CLOの選任・届出がまだ完了していない場合は、計画の作成より先に済ませます。選任の届出は指定後すみやかに行うことが求められており、様式第3にはCLOの役職名・氏名を記載する欄があります。CLOが担うのは計画書への署名だけではありません。国の資料では、自社の物流実態の把握と中長期計画の取りまとめ、計画実行のための社内体制整備と進捗管理、調達・生産・営業など他部門や運送事業者との調整、定期報告の取りまとめが、CLOが統括する業務として整理されています。誰がこの機能を担うのかを曖昧にしたままでは、計画は書けても実行が止まります。

準備2:第一種・第二種の該当区分と、計画の対象範囲を確定する

物流効率化法は、荷主を運送契約の有無で2つに区分しています。第一種荷主とは、自らの事業に関して運送契約を結び、トラック事業者に貨物を運送させる立場の荷主です。出荷側、いわゆる発荷主が典型です。第二種荷主とは、運送契約の当事者ではないものの、自らの事業に関して継続して貨物の受渡し(受け取りまたは引き渡し)を行う立場の荷主です。仕入や納品を受け入れる着荷主が典型です。

重要なのは、指定基準となる前年度の取扱貨物重量9万トンが、第一種・第二種それぞれの立場で個別に算定される点です。製造業や卸売業では、製品の出荷(第一種)と原材料の仕入(第二種)の両方が基準を超え、両方の立場で指定される企業もあります。自社がどの立場で指定されたかは指定通知で確認できますが、計画に書く内容は立場によって変わります。第一種であれば積載効率の向上や輸送回数の見直しなど輸送側の措置が中心になり、第二種であれば荷待ち時間の短縮や納品条件の見直しなど受入側の措置が中心になります。

この区分整理を曖昧にしたまま計画を書くと、輸送の話と受入の話が混在し、後の定期報告で「どの拠点の、どの立場の数字か」を説明できなくなります。拠点別・立場別に対象範囲を一覧化することが、この段階のゴールです。

準備3:積載率・荷待ち時間・荷役等時間の実測値を揃える

中長期計画書には、判断基準を踏まえた3つのテーマ、すなわち「1回の運送ごとの貨物重量の増加(積載効率の向上)」「運転者の荷待ち時間の短縮」「運転者の荷役等時間の短縮」について、措置の内容・実施時期・目標を記載します。なお本記事では、状態を指す「積載効率」と指標を指す「積載率(車両の最大積載量に対する実際の積載量の割合)」を同じ意味で使い、以降は原則「積載率」と表記します。現状の実測値がなければ、目標も措置も書けません。準備期間の大半は、実はこのデータ収集に費やされます。

必要になる主なデータと、社内での典型的な保有元は次のとおりです。

必要データ主な保有元典型的な形式よくある欠損
輸送重量出荷実績・WMSCSV・帳票実重量ではなく理論値しかない
輸送距離TMS・運賃請求データ帳票実走行距離が取得できない
車両の最大積載量運送会社の車両情報台帳・紙便に紐づく車格が記録されていない
荷待ち時間バース予約・入退場記録システムログ・手書き到着時刻が記録されていない拠点がある
荷役等時間現場記録・ドライバー報告手書き・聞き取り荷待ちと荷役の区別が曖昧

貨物重量の把握が難しい業種向けには、国の解説資料で換算方法の例が示されています。商品マスタの重量データから集計する方法、容積1立方メートルあたり280kgで換算する方法、トラックの最大積載量で換算する方法、金額から換算する方法です。実測が理想ですが、初年度にすべての拠点で精緻なデータを揃えるのは現実的でない場合もあります。その場合は、換算方法と対象範囲を明記した上で概算値を使い、翌年度以降に精度を上げる方針を計画に書く方が誠実です。

荷待ち時間・荷役等時間については、測定の起点と終点を先に決めることが重要です。荷待ち時間はトラックが到着してから荷役等が始まるまでの時間、荷役等時間は荷積み・荷卸し等の開始から終了までの時間と整理されています。バース予約システムや入退場記録がある拠点はログから算定できますが、記録のない拠点では、当面はドライバーからの聞き取りやサンプル調査で概況を掴み、記録の仕組みづくり自体を計画の措置に含める方法があります。荷待ち時間等の算定方法の考え方は国の公表資料でも示されているため、自己流の定義で集計を始める前に確認しておくと、翌年の定期報告との整合が取れます。

なお、ここで整えたデータは、2027年7月末の定期報告でそのまま使います。一度きりの集計ではなく、毎年度回る収集プロセスとして設計しておくと、翌年の負担が大きく変わります。

準備4:数値目標と実施措置を「守れる水準」で設計する

目標設計で参照すべき国の水準は明確です。物流効率化の基本方針では、車両全体で積載効率を44%に高めること(5割の車両で積載効率50%を実現)、トラックドライバー1人当たり年間125時間の拘束時間を短縮すること、1運行の荷待ち時間・荷役等時間を合計2時間以内(1回の受け渡しでは1時間以内)とすることが目標として掲げられています。

ただし、国の目標をそのまま自社の目標として書き写すのは危険です。中長期計画の数値目標は、翌年度以降の定期報告で実績との差分を毎年問われます。実測に基づかない高い目標は、来年度の報告で自社を縛る負債になります。現状値を起点に、実施措置の効果を積み上げて到達可能な水準を設定する。この設計手順の詳細は、別記事「中長期計画の数値目標の決め方|守れる目標の設計手順」で解説しています(内部リンク:中長期計画の数値目標の決め方)。

目標の書き方には型があります。「いつまでに・どの指標を・どの算定条件で・現状値から目標値へ」の4要素を揃えることです。たとえば「積載効率を改善する」ではなく、「2028年度までに、重量ベースの平均積載率を52%(2025年度実績)から58%へ改善する」と書きます。算定条件と現状値の年度が入っていない目標は、翌年度の報告で達成判定ができず、社内でも進捗を管理できません。

実施措置の検討では、経済産業省が2026年3月に公表した記載事例集が参考になります。製造業・卸売業・小売業・連鎖化事業者の4種類ごとに、「取組が進んでいる企業向け」「これから取組を深める企業向け」の2水準で記載例が示されています。ただし事例集は制度理解のための例示であり、そのまま転記するための雛形ではありません。自社の物流実態に置き換えて記載する必要があります。

準備5:e-Gov電子申請の実務を、提出の2週間前までに潰す

最後の準備は提出手続きそのものです。届出・指定・計画提出などの手続きは、原則としてe-Gov電子申請によるオンライン手続きで行います。申請にはGビズIDが必要で、アカウント種別は原則「プライム」での取得が求められています。プライムは取得時に審査があるため、即日では使えません。未取得であれば、計画の中身より先にID取得を進めるべきです。

手続き上のつまずきどころも公表されています。提出先は主たる事業の所管省庁を選択する必要があり、誤ると差し戻されます。また、申請データを一時保存した後に再開すると、入力に不備がなくてもエラーが表示される事象が案内されており、その場合は一時保存データを使わず改めて申請することが推奨されています。国土交通省は操作マニュアルを公開しており、e-Gov上では大分類「国土交通」、中分類「物流」、小分類「物流効率化法」で手続きを検索できます。

情報源としては、経済産業省と国土交通省が2026年8月18日に開催した説明会の資料と動画が公開されており、施行の最新状況、中長期計画の記載例と注意点、システム上での提出方法がまとめられています。提出前に担当者と一度視聴しておくと、差し戻しの典型パターンを事前に潰せます。

これらはいずれも、期限当日に発覚すると致命的なトラブルです。10月末ちょうどの提出を予定せず、遅くとも10月中旬には一度提出まで通す前提でスケジュールを組むことを推奨します。

よくある誤解

「計画は一度出せば終わり」という誤解。 計画の提出は5年に1度で済む場合がありますが、定期報告書(様式第5)は毎年度7月末に提出義務があります。取組状況はチェックリスト形式と実測値で毎年報告します。

「目標は高く書くほど評価される」という誤解。 国は主要な荷主の取組状況を調査し、結果を公表する仕組みを持っています。実績が伴わない目標は、翌年度以降の報告で説明責任として返ってきます。

「物流部門の書類仕事である」という誤解。 CLOは役員等の経営幹部から選任することが求められており、部門間調整や設備投資判断を含む経営機能として位置づけられています。

「紙で郵送すればよい」という誤解。 手続きは原則オンラインです。GビズIDの取得を含め、電子申請の準備が前提になります。

10月末までの実務チェックリスト

  • 指定通知を確認し、第一種・第二種のどちらの立場での指定かを特定した
  • CLOの選任・届出を完了した(指定後すみやかに、が要件)
  • 経営会議で数値目標の承認プロセスと投資判断の時期を確認した
  • 拠点別・立場別に計画の対象範囲を一覧化した
  • 積載率・荷待ち時間・荷役等時間の実測値(または換算値と算定条件)を揃えた
  • 国の目標水準と自社の現状値のギャップを把握した
  • 実施措置を実施時期・担当部門つきで具体化した
  • 数値目標を、定期報告で説明できる水準で設定した
  • GビズID(プライム)を取得し、e-Govで手続きを検索できることを確認した
  • 提出先の所管省庁を確認し、10月中旬提出のスケジュールを引いた

まとめ

初回期限の10月末は、例外的に延長された締切です。準備の本丸は書類の文面ではなく、積載率・荷待ち時間・荷役等時間の実測と、経営としての目標合意にあります。そしてここで整えたデータ収集の仕組みは、来年7月の定期報告から毎年使い続けることになります。

SusLogiは、WMS・TMS・物流伝票などに散在するデータを統合し、積載効率や荷待ち時間を拠点別・便別に可視化するSaaSです。中長期計画に書ける実測値を揃え、定期報告まで毎年回る仕組みを作る用途で活用できます。まずは自社の対応状況の棚卸しから始めたい方は、本記事のチェックリストを整理した「物流効率化法 対応チェックリスト(Excel)」を無料でダウンロードできます。

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