はじめに
CLOの選任届出を進めるには、候補者の要件を確認し、社内で選任を決定したうえで、行政への届出につなげます。法務・総務・人事・物流企画がそれぞれ情報を持っているため、誰が確認し、誰が提出するかを最初に決めておくと、手続を追いやすくなります。
提出後も、人事異動に合わせて情報を更新する必要があります。本記事では、選任から届出、交代時の対応までを順に解説します。法令上の要件と区別して、社内での情報整理や役割分担の例も紹介します。
まず確認する選任要件と届出時期
物流効率化法の正式名称は「物資の流通の効率化に関する法律」です。特定荷主と特定連鎖化事業者には、物流統括管理者(CLO)の選任義務があります。指定を受けた後は速やかに選任し、選任・解任したときは、遅滞なく氏名と役職を所管大臣へ届け出ます。[1〜3]
CLOは、中長期計画の作成や、トラックドライバーの負荷の低減、輸送される物資のトラックへの過度の集中の是正に向けた事業運営方針・管理体制などを統括する立場です。そのため、重要な経営判断に参画する管理的地位にある人を選任する必要があります。公式資料では、役員等の経営幹部から選ぶことが説明されています。[1・4]
選任届出の時期を、中長期計画の提出期限と混同しないことも大切です。特定荷主向け手引きでは、遅くとも中長期計画・定期報告の提出までを目安としていますが、法令上の基本は、速やかな選任と遅滞ない届出です。計画の提出日まで待ってよい、と一律に解釈しないでください。[1・6]
候補者は肩書と実際の権限を確認して選ぶ
候補者を検討するときは、物流の知識に加え、会社の重要な意思決定に関わる立場かを確認します。「物流部長」「担当役員」といった肩書だけで結論を出すのではなく、職務権限規程や経営会議への参加状況などを見て、選任要件を満たすかを判断します。判断の理由を社内記録に残しておくと、担当者が交代した際にも説明できます。
他の職務との兼務は可能です。公式Q&Aでは、勤務場所や常勤・非常勤を問わず、講習の受講も義務付けていません。ただし、重要な経営判断に参画するという要件は、兼務の場合も変わりません。[5]
同じ事業者が特定第一種荷主・特定第二種荷主・特定連鎖化事業者のうち複数の指定を受けている場合は、各区分のCLOとして同一の人を選任します。区分ごとに別の候補者を立てないよう、指定通知をまとめて確認してください。[2・3]
候補者が決まったら、社内の決裁規程に沿って選任を決定します。選任を決めた日、実際の選任日、届出を提出した日は、必要に応じて別々に記録します。法令が一律に特定の社内会議や決裁書式を指定しているわけではありません。
届出書の作成前にそろえる情報
書類の作成は、指定通知と人事情報、選任の社内記録をそろえてから進めます。次の表は、届出内容を確認するための社内用の整理例です。すべての資料を行政へ添付するという意味ではありません。
| 確認する情報 | 確認元の例 | 照合するポイント |
| 指定の内容 | 指定通知 | 対象法人、指定区分、識別番号、所管省庁 |
| 法人と候補者の情報 | 法人情報、人事台帳、組織図 | 法人名・法人番号、候補者の正式氏名・現役職 |
| 選任・解任の内容 | 社内決裁、人事発令 | 選任・解任日、解任理由、決定内容 |
| 行政からの連絡先 | 担当者・連絡先の管理情報 | 問い合わせに対応する人と連絡先 |
選任・解任の届出は、荷主、連鎖化事業者ともに様式第4で定められています。実際の記載項目と添付の要否は、対象区分の最新様式、記載要領、電子申請画面で確認します。選任日や役職が分からないときは、推測で記入せず、人事・総務や選任を決めた部門に確認してください。[2・3]
特定荷主向け手引きでは、CLOの役職欄には社内での役職を記載し、必ずしも「物流統括管理者」という名称にする必要はないとされています。指定時の識別番号は、指定通知から正確に転記します。[6]
社内確認を終えたら提出と照会対応を進める
提出前には、届出書と指定通知、人事情報、選任記録を照合します。書類作成と提出を同じ担当者が行う場合でも、氏名・役職・日付を確認する人を決めておくと、記載の食い違いを見つけやすくなります。
公式Q&Aでは、物流効率化法の手続は原則としてe-Gov電子申請でのオンライン提出が案内されています。対象区分の公式案内で提出先と操作方法を確認してください。特定荷主では、指定通知を発出した大臣等を手引きに従って確認します。特定連鎖化事業者の提出方法は、当該区分の案内で確認します。[3・5・6]
送信後は、提出控えや取得できる通知を保存し、受付状況、照会、修正依頼を確認します。担当者の異動や休暇で連絡が止まらないよう、提出後の対応者と引継ぎ先も決めておきましょう。
社内の分担は、例えば、法務が法定要件と様式を確認し、人事・総務が氏名・役職・発令内容を照合し、物流企画がCLOを支える業務体制を整理する形です。届出の実務担当は、書類作成から提出、控えの保存、照会対応までを管理します。この分担は運用例なので、自社の組織に合わせて調整してください。
提出後は人事異動と届出情報をつなぐ
CLO本人が交代した場合は、旧任者の解任と後任者の選任に関する届出を遅滞なく行います。人事発令だけで行政への手続が完了するわけではないため、人事・総務から届出担当へ連絡する手順を用意してください。[1〜3・5]
管理台帳には、現任者の氏名・役職、選任日、届出の提出日、提出先、照会対応の状況を残すと便利です。交代時には新旧の情報と解任日・理由もひも付けます。保存期間と閲覧権限は、法務や情報管理部門と社内ルールに沿って決めます。
例えば、特定第一種荷主と特定第二種荷主の両方に指定されたA社で、同じ役員を両区分のCLOに選任したとします。後に本人が交代する際、人事が新旧の氏名と選任・解任日を届出担当へ知らせ、担当者が記録を照合して届け出る流れです。これは手順を示す仮想例であり、実在企業の事例ではありません。
よくある質問
役職名だけが変わった場合も届出が必要か
特定荷主向け手引きでは、本人の変更は提出が必要ですが、役職のみの変更は提出しなくても問題ないとされています。ただし、変更後も選任要件を満たすかは確認が必要です。特定連鎖化事業者については、この手引きの扱いをそのまま当てはめず、当該区分の窓口へ確認してください。[6]
グループ会社で同じ人を選任できるか
特定荷主向け手引きでは、複数社での兼任は可能ですが、それぞれの事業者に籍を置く経営幹部である必要があると説明されています。親会社でCLOを選任しただけで、各社の対応が済むわけではありません。対象法人ごとに要件と手続を確認します。[6]
CLO本人が電子申請を操作する必要があるか
法定のCLOとして選任する人と、書類作成や申請操作を担当する人は、社内の役割として分けて整理できます。実際に誰が提出操作を行えるかは、電子申請の利用条件や対象手続の案内で確認してください。
選任した人を社外へ公表する必要があるか
公式Q&Aでは、CLOの対外的な公表は求められていません。行政への届出と、社外への公表は別の扱いです。[5]
最初の一歩は指定通知と人事情報の照合
まず指定通知と現在の人事情報をそろえ、候補者の確認担当、社内の決裁者、届出担当を決めましょう。そのうえで、選任の決定から提出後の連絡までを一つの案件として記録します。人事異動時の連絡方法まで決めておけば、提出後も現任者と届出済みの情報を照合できます。
本記事は2026年10月8日時点で確認した法令・公式資料に基づく一般的な解説です。個別の選任要件や記載方法に不明点がある場合は、所管省庁または専門家に確認し、届出前に最新の様式・案内を参照してください。
出典・参考資料
[1]物資の流通の効率化に関する法律(e-Gov法令検索)
[2]物資の流通の効率化に関する法律の規定に基づく荷主に係る届出等に関する命令(e-Gov法令検索)
[3]物資の流通の効率化に関する法律の規定に基づく連鎖化事業者に係る届出等に関する省令(e-Gov法令検索)
[4]物流統括管理者(CLO)の選任(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[5]よくあるご質問・言葉の定義(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[6]「物流効率化法」対応の手引書 特定荷主編 第1.1版(経済産業省、2026年4月)
閲覧日:2026年10月8日