はじめに
物流効率化法の定期報告書を作成するとき、最初に確認したいのは「どの数値を集めるか」だけではありません。報告対象年度、測定する施設、時間の定義をそろえることが、集計のやり直しを防ぐ第一歩です。
定期報告には、荷待ち時間等の数値に加え、物流効率化に向けた取組の実施状況も含まれます。現場の記録と施策の進捗を結び付け、提出した内容の根拠を後から確認できるようにしておきましょう。本記事では、特定荷主の報告担当者向けに、定期報告の基本と、データ収集から提出前確認までの進め方を解説します。
定期報告の対象と提出時期
物流効率化法の正式名称は「物資の流通の効率化に関する法律」です。同法に基づく特定第一種荷主・特定第二種荷主は、指定を受けた年度の翌年度以降、毎年度、物流効率化に向けた措置の実施状況を荷主事業所管大臣へ報告する義務があります。[1]
定期報告書は様式第5を使用し、提出期限は毎年度7月末日です。災害その他やむを得ない事由により提出が難しい場合には、例外的な期限の取扱いが定められています。[2]
例えば、2026年度に指定を受けた特定荷主は、2026年度の実施状況について、2027年7月末日までに初回の定期報告を行います。報告対象年度は4月から翌年3月までです。社内で月次や四半期ごとに進捗を確認する場合も、法定報告の対象年度とは分けて管理します。[4]
なお、2026年度の中長期計画書に設けられた「10月末日」という経過措置は、定期報告書の提出期限ではありません。二つの書類の提出スケジュールを混同しないようにしてください。[2]
報告するのは時間の数値だけではない
特定荷主の定期報告書は、おおむね次の構成です。[4]
| 区分 | 主な内容 |
| 基本情報 | 事業者や物流統括管理者などの情報 |
| 判断基準の遵守状況 | 判断基準に沿った取組の実施状況 |
| その他の実施状況 | 上記以外の措置や関係事業者との連携など |
| 荷待ち時間等の状況 | 対象施設、測定結果、報告省略の適用状況など |
時間データの収集と並行して、発注・納品条件の見直し、受渡し時間帯の調整、荷姿の改善などの実施状況も確認しておきましょう。
社内で管理する積載率、物流コスト、CO₂排出量などが、すべて定期報告の必須数値項目になるわけではありません。法定様式に必要な情報と、社内改善に使う指標を区別することが大切です。
測定する施設と期間を決める
荷待ち時間等の把握では、まず自社が管理する施設を整理します。施設の所有者だけで判断せず、賃借している施設や、施設内の作業を外部委託している場合も含めて、管理の実態を確認してください。
寄託先の施設には、所定の取扱いにより測定対象等から除外できる場合があります。ただし、寄託先との連携状況などの記載が必要になるため、「外部の倉庫だから報告と無関係」とは考えないようにします。[4]
常時測定する方法のほか、所定の条件に沿ったサンプリング測定も認められています。サンプリングでは、主に次の点を確認します。[3]・[4]
- 対象施設は、第一種荷主・第二種荷主の区分ごとに、対象となる年間の取扱貨物重量の半分程度以上をカバーするよう選定する。
- 各四半期について、連続する5営業日以上測定する。
- 前年度の実績に照らして、各四半期中で売上金額が最も低いと見込まれる月を、測定月から除く。
- 測定期間中は、原則として対象となるすべての運行を把握する。
「ある拠点で5営業日、100運行を測定した」という事実だけでは、法定報告の条件を満たしているとは判断できません。施設の選定範囲、四半期ごとの測定、対象運行の網羅性を確認する必要があります。
個別の除外条件や施設の扱いは、最新の手引書に沿って確認してください。
荷待ち時間と荷役等時間の定義をそろえる
荷待ち時間は、到着時刻から荷役開始時刻までを一律に差し引けばよいとは限りません。
例えば、指定時刻より早く到着した場合と、指定された時間帯の中に到着した場合では、算定上の開始時点が異なります。運送事業者側の事情による遅刻や、運転者の休憩なども確認が必要です。[5]
荷役等時間には、運転者が行う積卸しだけでなく、検品などの関連作業や立会いも含まれます。倉庫内の作業時間をすべて計上するのではなく、運転者の作業・立会いとの関係を確認してください。[5]
データ収集前に、少なくとも次の記録の意味を関係者で共有しておきましょう。
- 指定時刻・指定時間帯
- 実際の到着時刻と受付時刻
- 荷役等の開始・終了時刻
- 関連作業や立会いの内容
- 休憩など、算定から除く時間
荷待ち時間と荷役等時間は、原則として分けて把握します。ただし、実態として切り分けられない場合等には、合計時間で報告する取扱いがあります。記録が不足していることと、作業の実態から切り分けることが難しい事情は区別しましょう。[3]
集計結果から元の記録へ戻れるようにする
集計では、施設ごとに対象期間、対象運行、時間の定義、除外条件をそろえます。
報告様式には、施設ごとの月別の平均時間などを記載します。サンプリングで測定していない月は、手引書に従って「―」を記載する扱いです。測定していないことを「0分」として表すものではありません。[4]
社内では、次の情報を集計結果と対応付けて残すと、照会や訂正に対応しやすくなります。これは管理方法の例であり、すべてが法定の提出項目という意味ではありません。
| 残す情報 | 確認する目的 |
| 施設名・施設番号・対象期間 | 集計対象を特定する |
| 対象運行数・除外理由 | 集計範囲を確認する |
| 使用した時刻・算定方法 | 時間の定義を確認する |
| 元データの取得元・抽出日 | 根拠となる記録へ戻る |
| 訂正履歴・確認担当者 | 修正内容と確認経緯を把握する |
施設別の平均値から独自の全社指標を作る場合も、運行数などの重みを無視した単純平均では、実態と異なる数値になることがあります。法定様式に沿った集計と、社内分析用の集計は分けて管理しましょう。
データ不足と報告省略を混同しない
時刻の記録がない場合は、荷待ち時間をゼロで補完せず、受付記録、運行記録、現場への確認などから把握できる情報を探します。
公式の手引書では、システムによる記録に加え、手作業やヒアリングによる把握方法も示されています。ただし、担当者が任意の推計値で穴埋めしてよいという意味ではありません。[4]
把握できない情報が残る場合は、欠損の範囲と理由を整理し、記載方法を荷主事業所管省庁に確認してください。社内分析に推計を使う場合も、実測値とは区別して管理します。
荷待ち時間等には、所定の条件を満たす場合に報告を省略できる取扱いがあります。しかし、データが集まらないという理由だけでは適用できません。対象施設・運行や、付表の記載を確認する必要があります。
また、時間の報告を省略できる場合でも、定期報告書全体の提出義務がなくなるわけではありません。[4]
CLOと関係部門で提出前に確認する
特定荷主の物流統括管理者(CLO)が統括管理する業務には、定期報告書の作成に関する事務も含まれます。[2]
実際の作業は、社内の体制に応じて分担します。例えば、物流企画が報告案を取りまとめ、拠点管理が時刻記録と施設の状況を確認し、調達・営業が取引先との調整や取組状況を確認する方法です。
運送事業者などにデータを依頼するときは、目的、対象期間、必要項目、時間の定義、提出期限、訂正窓口を伝えます。個人情報や営業秘密を含む場合は、取得・共有する情報と担当者の範囲を必要最小限にしましょう。
提出先は指定通知で確認します。複数の荷主事業所管大臣等から指定通知を受けている場合には、それぞれの提出先を確認してください。[4]
提出前には、次の点を確認しましょう。
- 対象年度、荷主区分、提出先、提出期限が正しいか。
- 最新の様式第5を使用しているか。
- 判断基準に沿った取組の実施状況を確認しているか。
- 対象施設と測定期間が、採用した測定方法の条件に合っているか。
- 未測定、欠損、ゼロ分、報告省略を区別しているか。
- 報告値の根拠と訂正履歴を確認できるか。
- 社内の権限に沿った確認・承認を終えているか。
提出後は、提出した報告書、集計に使用したデータ、算定条件、提出完了を確認できる記録を対応付けて保管します。
まとめ
定期報告書の作成は、数値を様式へ転記する作業だけではありません。報告対象年度と施設を確定し、適切な条件で測定したデータを、取組の実施状況と合わせて整理することが必要です。
特に、未測定をゼロとして扱うこと、任意の短期間の測定を法定報告にそのまま使うこと、データ不足を報告省略の理由にすることは避けましょう。
提出した内容と元の記録をつなげておくことで、翌年度の報告や日々の物流改善にも活用しやすくなります。
本記事は、2026年10月10日時点で確認した法令・公式資料に基づく一般的な解説です。個別の測定条件、報告省略、記載方法に不明点がある場合は、荷主事業所管省庁に確認してください。
出典・参考資料
[1]物資の流通の効率化に関する法律(e-Gov法令検索、第48条)
[2]物資の流通の効率化に関する法律の規定に基づく荷主に係る届出等に関する命令(e-Gov法令検索、第8条・第 10条・附則第2条)
[3]定期報告(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[4]「物流効率化法」対応の手引書 特定荷主編 第1.1版(経済産業省、2026年4月)
[5]よくあるご質問・言葉の定義(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
閲覧日:2026年10月10日
コメント