中長期計画と定期報告の違い 目的と記載内容と社内スケジュールを比較

はじめに

物流効率化法の中長期計画書と定期報告書は、どちらも物流効率化に関する提出物ですが、役割が異なります。

中長期計画書は、今後どのような措置を実施するかを示す書類です。定期報告書は、対象年度にどのような取組を行い、荷待ち時間等がどのような状況だったかを報告する書類です。

社内では関連付けて管理しながら、提出する内容とスケジュールは分けて整理しましょう。

本記事は、物流効率化法に基づく特定第一種荷主・特定第二種荷主に関する解説です。経営企画・法務と、計画・報告の作成担当者を対象としています。省エネ法など、別の制度に基づく同名の書類とは区別してください。

二つの提出物の基本的な違い

物流効率化法の正式名称は「物資の流通の効率化に関する法律」です。特定荷主には、判断基準を踏まえた中長期的な計画の作成・提出と、措置の実施状況に関する定期報告が義務付けられています。[1]

主な違いは次のとおりです。表は、法令と公式資料の内容を整理したものです。[2]・[3]・[4]・[5]

比較項目中長期計画書定期報告書
主な役割今後実施する措置と目標・時期を示す対象年度の取組状況と荷待ち時間等を報告する
使用する様式様式第3様式第5
対象期間提出年度を初年度とする、5年を超えない計画期間報告対象年度の4月から翌年3月まで
通常の提出期限毎年度7月末日が基本。内容に変更がない場合は提出間隔の取扱いがある指定を受けた年度の翌年度以降、毎年度7月末日
2026年度に指定された場合2026年度の提出期限は10月末日初回は2027年7月末日

定期報告は、中長期計画の数値目標に対する達成率を報告するだけの書類ではありません。判断基準に沿った取組や関連事業者との連携、荷待ち時間等の状況も整理します。

中長期計画には今後の措置を記載する

中長期計画は、判断基準を踏まえ、次の三つの領域について作成します。[3]

  • 運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加
  • 運転者の荷待ち時間の短縮
  • 運転者の荷役等時間の短縮

それぞれについて、実施する措置、具体的な内容・目標等、実施時期等、参考事項を記載します。

例えば、「受渡し時間帯を分散する」という施策であれば、対象拠点、取引先との協議内容、試行時期を具体化します。社内では、担当部署と進捗の確認方法も決めておくと、実施状況を追いやすくなります。

計画期間は必ず5年間にするものではありません。提出年度を初年度として、5年を超えない範囲で設定します。[2]・[5]

計画内容が前年度から変わっていない場合は、定めた計画期間の最終年度の翌年度7月末日までに、次の計画書を提出すれば足りる仕組みです。「必ず毎年提出する」「一度提出すれば5年間は変更を確認しなくてよい」と、一律に捉えないようにしてください。[2]

定期報告には対象年度の実施状況を記載する

定期報告では、判断基準の遵守状況、関連事業者との連携等の取組状況、荷待ち時間等の状況を報告します。[4]

計画に書いた施策名をそのまま転記するのではなく、対象年度に実際に何を行ったかを整理しましょう。取引先との協議を予定していた場合なら、協議を実施したか、試行まで進んだか、どの条件が調整中かを確認します。

社内管理では、未実施・協議中・試行中・本運用といった状態を区別する方法があります。これは社内管理の例であり、法定様式に共通の状態区分が指定されているという意味ではありません。

荷待ち時間等の測定には、対象施設、期間、運行、時間の定義に関する条件があります。任意の拠点で短期間測定しただけでは、そのデータが法定報告の条件を満たすとは判断できません。サンプリングや報告省略を利用する場合も、最新の公式資料で適用条件を確認してください。[4]・[5]

中長期計画の内容に変更がなく、その年度の計画書の提出を要しない場合でも、定期報告は毎年度必要です。[1]・[2]

計画値と実績値を比較する条件をそろえる

二つの提出物を関連付けるには、社内で施策ごとの管理番号を付け、計画、進捗、実績、根拠データを対応付ける方法があります。以下は社内管理の提案であり、法定様式そのものではありません。

荷待ち時間の短縮を目標にする場合は、少なくとも次の条件を合わせて記録します。

  • 基準となる年度・期間
  • 対象拠点と対象運行
  • 時間の定義と集計方法
  • 目標年度と目標値
  • 使用する記録と確認担当者

対象拠点や測定期間を変更した場合は、変更点と理由も残します。物量、時間帯構成、車格などが異なる数値を単純に比較し、施策の効果と断定しないようにしましょう。

計画の目標値、測定した実績値、社内分析用の推計値も区別します。記録がないことをゼロとして扱わず、欠損の範囲と理由を整理してください。法定報告での記載方法が不明な場合は、任意の推計で補う前に、荷主事業所管省庁に確認します。

初回提出と翌年度のスケジュールを分ける

2026年度に特定荷主の指定を受けた場合、中長期計画書は2026年10月末日までに提出します。一方、2026年度の実施状況に関する初回の定期報告書は、2027年7月末日までに提出します。[1]・[2]

「2026年10月末日」という経過措置は中長期計画書に関するものであり、定期報告書の初回提出期限ではありません。

社内スケジュールは、例えば次のように設計できます。法定の提出期限以外は、社内運用の例です。

時期主な作業
指定後から計画提出前課題、措置、目標、実施時期を整理し、社内確認を行う
2026年10月末日まで初回の中長期計画書を提出する
報告対象年度中施策を実施し、必要な測定と取組記録を残す
2027年4月から6月ごろ2026年度の実施状況を集計し、報告案を確認する
2027年7月末日まで初回の定期報告書を提出する。計画書については変更の有無等から提出要否を確認する

報告対象期間は4月から翌年3月までです。計画書を提出してから測定を始めれば十分とは限らないため、定期報告の対象期間と測定条件を早めに確認しましょう。[5]

災害その他やむを得ない事由により期限までの提出が困難な場合には、荷主事業所管大臣が当該事由を勘案して定める期限による取扱いがあります。自社の判断だけで期限を延ばさず、所管省庁に確認してください。[2]

CLOを中心に関係部門で管理する

特定荷主の物流統括管理者(CLO)は、中長期計画の作成を統括管理する立場です。定期報告書の作成に関する事務も、統括管理する業務に含まれます。[1]・[2]

実際の作業は社内体制に応じて分担します。例えば、物流企画が計画と報告を取りまとめ、拠点管理が現場の記録を確認し、調達・営業・生産部門が取引条件や施策の実施状況を確認する方法です。経営企画は経営計画や投資判断との整合性を、法務は制度上の要件や提出先を確認します。この分担は運用例であり、各部署の名称や担当が法令で一律に定められているわけではありません。

運送事業者などにデータを依頼する場合は、利用目的、対象期間、必要項目、定義、提出期限、訂正窓口を共有しましょう。個人情報や営業秘密を含む場合は、取得・共有する情報と担当者の範囲を必要最小限にします。

施策の検討では、荷主側の改善だけでなく、運送事業者や現場の作業負担も確認します。時間短縮や積載量の増加を理由に、安全確認や休憩を削る方法、過積載や無理な運行を前提とする方法は採用しません。

提出先は指定通知で確認します。複数の荷主事業所管大臣等から指定を受けている場合は、それぞれへの提出を確認してください。[5]

計画と報告をつなぐ仮想例

ある特定荷主が、午前中のトラック到着集中を課題としているとします。以下は説明のための仮想例であり、実在企業の実績ではありません。

中長期計画には、取引先と受渡し時間帯の分散を協議し、対象拠点で試行する措置と実施時期を記載します。社内では、営業を協議担当、拠点管理を運用担当、物流企画を進捗確認担当とします。

対象年度中は、協議の経緯、試行開始日、運用上の課題を記録します。荷待ち時間等は、法定報告の条件に沿って把握します。

定期報告では、その年度に実施した取組と、所定の方法で把握した荷待ち時間等を整理します。社内では、予定と実績の差を確認し、次の対応を決めます。協議が進まなかった場合も、予定どおり実施したことにはせず、実施状況を正確に整理します。

提出前に確認すること

二つの提出物を確認するときは、次の点を押さえましょう。

  • 中長期計画書と定期報告書の様式を取り違えていないか。
  • 計画期間と報告対象年度を区別しているか。
  • 初回提出時期、通常の提出期限、経過措置を確認しているか。
  • 計画内容の変更に伴う提出要否を確認しているか。
  • 定期報告を目標達成率だけの資料にしていないか。
  • 法定報告の集計条件と社内指標の条件を区別しているか。
  • 提出版、根拠データ、社内確認の記録を対応付けているか。

計画内容を変更する場合は、変更点と理由を記録し、提出時期を現行の法令・公式案内に沿って確認してください。提出前には、様式や手引書の更新も再確認しましょう。

まとめ

中長期計画書は今後の措置を示し、定期報告書は対象年度の取組状況を報告する書類です。関連する提出物ですが、同じ資料ではありません。

社内では施策ごとに計画と実績をつなぎ、提出時には、それぞれの目的、様式、対象期間、期限に合わせて整理します。まずは自社の指定通知と最新様式を確認し、二つの提出物の担当者とスケジュールを分けて決めましょう。

本記事は、2026年10月12日時点で確認した法令・公式資料に基づく一般的な解説です。社内の管理方法や役割分担は提案であり、法定の記載事項や提出手続を置き換えるものではありません。個別の提出要否や記載方法に不明点がある場合は、荷主事業所管省庁に確認してください。

出典と参考資料

[1]物資の流通の効率化に関する法律(e-Gov法令検索、第46条・第47条・第48条)
[2]物資の流通の効率化に関する法律の規定に基づく荷主に係る届出等に関する命令(e-Gov法令検索、第6条・第8条・第10条・附則第2条)
[3]中長期的な計画の作成(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[4]定期報告(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[5]「物流効率化法」対応の手引書 特定荷主編 第1.1版(経済産業省、2026年4月。中長期計画・定期報告に関する章)閲覧日:2026年10月12日

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