共同輸配送を検討するとき、配送先が近い、車両に空きがあるといった条件だけでは、実施できるかどうかは判断できません。荷姿や温度帯、納品時間、積卸し方法、費用負担なども確認する必要があります。
まずは候補となる輸送区間を選び、現在の条件と変更できる条件を整理しましょう。そのうえで、荷主・運送事業者・納品先が実施条件を合意し、試行によって効果と負担を確かめます。
本記事では、物流企画・調達担当者向けに、共同輸配送の候補選定から条件調整、試行、評価までの進め方を解説します。管理表や手順は実務上の提案であり、行政への提出様式を示すものではありません。
共同輸配送で何を共同化するかを決める
共同輸配送は、複数の荷主や物流事業者が連携し、輸送・配送を共同で行う取組です。本記事では、複数荷主の貨物を積み合わせるなどして、車両や運行を共同利用するケースを中心に扱います。
国土交通省の荷主向け判断基準では、第一種荷主の取組として、積合せや共同配送、復荷の確保に取り組めるよう、適切なリードタイムの確保や荷主間の連携を進めることが示されています。第二種荷主についても、協議に応じて必要な協力を行うことなどが示されています。[1]
ここでいう第一種荷主・第二種荷主は、物流効率化法上の区分です。自社が運送契約を結んで運送を委託するのか、他社が運送を委託した貨物を受け渡すのかなど、契約と実態に基づいて確認します。発荷主・着荷主と固定的に対応する区分ではありません。[3]
検討を始める際は、共同化する範囲を具体的にします。例えば、拠点間の幹線輸送をまとめるのか、同じ地域への配送をまとめるのか、複数の出荷元を巡回して集荷するのかによって、調整する条件が変わります。
対象となる出発地・到着地、曜日、貨物、関係事業者を整理し、誰が運送契約を結び、誰が配車や納品条件を調整するかを確認しましょう。
候補区間は荷物・時間・作業の条件で比較する
候補となる輸送区間では、物量だけでなく、貨物の性質や現場の作業条件を比較します。
次の表は、候補を絞り込むための確認例です。
| 確認項目 | 主に確認する内容 |
|---|---|
| 輸送区間 | 出発地・到着地、立寄り先、集荷や迂回に必要な距離 |
| 物量 | 重量、容積、パレット数、曜日別・季節別の変動 |
| 荷姿 | 寸法、積重ねの可否、パレット仕様、荷崩れ防止方法 |
| 貨物の特性 | 温度帯、臭い移り・汚損の防止、混載の制約 |
| 時間条件 | 出荷準備の完了時刻、発注締切、納品日、受付時間帯 |
| 積卸し条件 | 使用設備、積込み順序、荷卸し順序、作業担当 |
| 納品条件 | 検品方法、伝票、予約、返品・回収物の取扱い |
| 車両条件 | 最大積載重量、荷室寸法、必要な設備、進入条件 |
貨物の合計重量が最大積載重量以内でも、それだけで積み合わせられるとは限りません。容積、積付け、混載の制約、荷卸し順序なども確認します。
各条件は、「現状のまま対応できる」「協議すれば変更できる」「変更が難しい」に分けると、検討を進めやすくなります。変更が必要な項目には、調整先、担当者、回答期限を付けて管理しましょう。
月平均の物量だけで判断せず、繁忙日や物量が少ない日も確認します。通常は一台に収まっても、特定の日に追加便が必要になる場合は、その運用と費用も検討対象になります。
納品先と運送事業者を含めて条件を調整する
荷主同士で合意しても、納品先の受付時間や運送事業者の運行条件に合わなければ、計画どおりに運用できません。
例えば、発注締切を早める、納品曜日をまとめる、受付時間帯に幅を持たせるといった変更を検討するときは、調達・営業・生産・拠点管理などの関係部門も参加します。
運送事業者には、候補ルートと物量だけでなく、積卸し方法、待機の発生状況、車両条件も伝え、実行可能な運行案を確認しましょう。公式の判断基準でも、関係事業者との協議による配送の共同化や、配車・運行計画の最適化が示されています。[2]
共同化によって立寄り先や作業が増える場合は、追加の走行時間、荷待ち時間、荷役等時間を見込みます。車両の空きだけを根拠に、従来と同じ時刻で運べると判断しないようにしてください。
費用と責任の分担を試行前に整理する
試行を始める前に、誰がどの業務を担当し、費用を負担するかを文書にまとめます。
以下は確認事項の例です。法的責任の所在は、契約・約款・適用法令を踏まえて確認してください。
| 項目 | 合意しておきたい内容 |
|---|---|
| 契約・手配 | 運送契約の当事者、配車窓口、変更指示を出す担当者 |
| 費用 | 運賃、集荷・積替え・保管・荷役等の料金、管理費 |
| 費用配分 | 重量、容積、距離、作業量など、配分に使う条件 |
| 受渡し | 貨物の確認方法、数量・状態の記録、受領の確認 |
| 事故・遅延 | 連絡先、初動対応、調査、補償・保険の確認 |
| 変更・中止 | 物量変更、キャンセル、追加便、試行中止時の対応 |
| 輸送用器具 | パレット等の所有者、回収方法、紛失・破損時の対応 |
費用配分は、一つの基準だけで決められるとは限りません。重量が軽くても容積を多く使う貨物や、積卸しに時間がかかる貨物もあるため、実際のサービス内容と負担を踏まえて協議します。
国土交通省の判断基準でも、取組や費用負担に応じた契約内容の見直しが示されています。[1] [2]
共同化によって新たに発生する作業についても、担当者、料金、必要な設備を確認し、現場任せにしないことが大切です。
荷主間で共有する情報の範囲を決める
共同輸配送には情報連携が必要ですが、競合する荷主同士で、各社の情報を広く共有すればよいわけではありません。
公正取引委員会のグリーンガイドラインでは、共同物流について、物流サービスの調達市場や対象商品の販売市場への影響、価格・数量等の情報の取扱いなどを検討する考え方が示されています。[5]
また、共同配送の検討に必要な情報を物流部門で取り扱い、製造・販売部門等には共有しない仕組みを前提として判断された相談事例もあります。ただし、これは個別の条件に基づく判断であり、同じ仕組みを設ければ、すべての案件が問題なくなるという意味ではありません。[6]
実務では、情報交換を始める前に、次の点を整理しましょう。
- 検討に必要な情報と、その利用目的。
- 情報を閲覧できる会社・部署・担当者。
- 他部署への転送や目的外利用の取扱い。
- 保存期間、削除、訂正の方法。
- 運営事務局や物流事業者に集約する情報の範囲。
実際の輸送に必要な貨物情報は運送事業者へ正確に伝えたうえで、競合荷主間で共有する情報を設計します。商品価格、販売計画、顧客情報などを含む場合は、法務・専門家に確認し、必要に応じて公正取引委員会の相談制度を利用してください。
積載率だけで共同化の効果を判断しない
共同輸配送の評価では、積載率と積載効率を区別します。
重量基準の積載率は、次の式で計算します。[3]
積載率(%)=積載重量÷最大積載重量×100
一方、国土交通省の自動車輸送統計における積載効率は、次の式です。[4]
積載効率(%)=輸送トンキロ÷能力トンキロ×100
輸送トンキロは、集計対象範囲内で、各貨物の重量(トン)に、その貨物を輸送した距離(キロメートル)を掛けて合計した量です。
能力トンキロは、各車両の最大積載重量(トン)に、同じ対象範囲の空車区間を含む走行距離(キロメートル)を掛けて合計した量です。積替えや車両変更がある場合は、それぞれの車両・区間に分けて計算します。[4]
共同化した一部区間で積載率が上がっても、集荷や帰庫のための空車走行、迂回、追加便が増える可能性があります。効果を評価するときは、共同化に伴って変わる運行全体を対象にしてください。
複数車両をまとめる場合は、輸送トンキロと能力トンキロをそれぞれ合計して計算します。
実車率は、総走行距離に占める、貨物を積んで走った距離の割合です。公式Q&Aの「積載効率=積載率×実車率」という関係を使う場合も、対象範囲と平均の取り方をそろえる必要があります。車両ごとの最大積載重量や走行距離が異なる場合、単純平均した積載率と実車率を掛けても、トンキロから求めた積載効率と一致するとは限りません。[3] [4]
評価には、積載状況に加えて、次の情報も使います。
- 必要な運行回数と総走行距離。
- 空車走行距離。
- 荷待ち・荷役等時間と運行時間。
- 運賃に加え、積替え・保管・管理等を含む費用。
- 納品遅延、誤配送、破損などの発生状況。
- 関係者の作業負担。
CO₂削減を成果として示す場合は、対象範囲と算定方法を定めて別途計算します。積載率が上がった割合を、そのままCO₂削減率として扱わないでください。
仮想例で見る候補選定から試行まで
A社とB社が、共通の出発拠点から同じ納品先へ、同じ日に貨物を出荷しているとします。以下は説明用の仮想例であり、実在企業の実績ではありません。
A社の貨物は4トン、B社の貨物は3トンです。両社の貨物を最大積載重量10トンの車両に積み合わせると、重量基準の積載率は次のように試算できます。
(4トン+3トン)÷10トン×100=70%
ただし、この計算だけでは共同配送を実施できるとは判断しません。荷室に収まるか、積付けや混載に問題がないか、両社の納品条件を同時に満たせるかを確認します。
例えば、両社の納品指定時間が異なる場合は、納品先と協議し、同じ便で受け入れられる時間帯があるかを確認します。検品や伝票処理を会社別に行う必要があれば、その作業手順も決めます。
条件が整ったら、対象日と対象貨物を限定して試行します。実際の積載量、走行距離、待機・作業時間、費用、納品状況を記録し、共同化前の運用と比較します。
なお、70%は貨物を積んだ状態の重量積載率です。空車区間を含む積載効率や、運行全体のコスト削減率を示す数値ではありません。
試行の結果から本運用の条件を決める
試行前には、何を確認できれば本運用に進むかを決めておきます。例えば、納品条件を守れること、必要な設備と作業体制を確保できること、費用配分に合意できることなどです。
安全や貨物品質に問題が生じた場合の中止条件、物量が想定を超えた場合の追加便、欠車時の代替手段も整理しておきましょう。
公式の判断基準でも、過積載などによって輸送の安全が損なわれないことや、積卸し作業の負担への配慮が示されています。共同化を理由に、無理な運行や必要な休憩の削減を前提としないことが必要です。[1] [2]
試行後は、当初の見込みと実績の差を確認します。物量や車両構成が変わっている場合は、その影響も記録し、単純な前後比較だけで共同化の効果を断定しないようにします。
データの欠損はゼロで補わず、未取得の理由と影響範囲を残します。推計を使った箇所は、実績と区別してください。
本運用に移る際は、合意した条件、担当者、連絡先、変更手順を更新します。物量、納品条件、参加企業が変わった場合には、費用や運行条件も見直しましょう。
最初の一歩は、候補となる一つの輸送区間について、荷姿・納品条件・作業方法・費用・責任分担を並べることです。変更が必要な条件と調整先が分かれば、共同化の可能性を具体的に検討できます。
本記事は、2026年10月16日時点で確認した公式資料に基づく一般的な解説です。管理手順は実務上の提案、数値例は説明用の仮定です。個別の契約や情報共有の適否は、取引実態を踏まえて確認してください。
出典・参考資料
[1]荷主(第一種・第二種)の判断基準等(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[2]貨物自動車運送事業者等の判断基準等(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[3]よくあるご質問・言葉の定義(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[4]自動車輸送統計調査「用語の解説」(国土交通省)
[5]グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方(公正取引委員会、共同物流の項)[6]業務提携に向けた情報共有等(公正取引委員会、令和6年度相談事例9)