配車システムにデータが蓄積されていても、そのまま集計するだけでは、積載効率を正しく把握できるとは限りません。予定と実績の違い、途中の積卸し、空車走行、車両の変更などを整理する必要があります。
分析の出発点は、どの車両が、どの区間を、どれだけの貨物を積んで走ったかを確認することです。その記録を基に計算し、元データまでたどれる形で表示します。
本記事では、データ連携・物流企画担当者向けに、必要なデータ項目、集計方法、ダッシュボードの設計を解説します。データ構成や画面構成は社内改善に向けた提案であり、行政の指定様式や特定システムの仕様を示すものではありません。
最初に分析する範囲を決める
データを集める前に、何を判断したいのかを明確にします。
例えば、出発時の積載状況を確認したいのか、途中の積卸しや帰りの空車走行を含めて運行を評価したいのかによって、必要なデータが変わります。
最初に、次の条件を記録しましょう。
- 対象期間と、日付をまたぐ運行の扱い。
- 対象の運送事業者、車両、拠点、輸送区間。
- 往路、復路、回送、構内走行を含める範囲。
- 車両全体の貨物を把握するのか、自社貨物だけを把握するのか。
- 予定値、実績値、推計値のどれを使うのか。
特に注意したいのは、自社貨物と車両全体の貨物の違いです。
混載便で他社貨物の情報を取得できない場合、自社貨物の重量だけでは、車両全体の積載状況を把握できません。「車両全体の積載率・積載効率」と表示せず、把握できている貨物と区間の範囲を明記してください。
必要項目は「車両・区間・貨物・実績」を軸に整理する
以下は、重量と距離を用いて分析するためのデータ項目の例です。配車システムだけでそろわない場合は、運送事業者の運行記録、出荷記録、車両資料などとの照合を検討します。
| 分類 | 主な項目 | 確認すること |
|---|---|---|
| 運行の識別 | 事業者ID、運行ID、運行日 | 同じ運行を重複して取り込まないか |
| 車両 | 車両ID、最大積載重量、車格 | 実際に使用した車両の情報か |
| 区間 | 区間ID、走行順、出発地、到着地 | 途中の積卸しや車両変更を区別できるか |
| 距離 | 区間距離、距離の取得方法 | 実走行距離か、予定・推計距離か |
| 貨物 | 貨物ID、重量、積込地点、荷卸し地点 | その区間に実際に載っていた貨物か |
| 積載状態 | 実車・空車・不明の区分 | 自社貨物がないだけで空車にしていないか |
| 時刻 | 出発・到着、積卸し等の時刻 | 予定と実績、イベントの意味が明確か |
| データ管理 | 取得元、更新日時、実測・推計区分、訂正履歴 | 数値の根拠と修正過程を追えるか |
「大型車」「中型車」などの分類と、計算に使う最大積載重量は別項目で管理します。代車を使用した場合も、予定していた車両の数値をそのまま使わないようにしてください。
重量の単位、梱包や輸送用器具を含む範囲、数量から重量へ換算する場合の係数もそろえます。換算値は、計量した値と区別して記録しましょう。
予定と実績を混ぜず、区間単位で整理する
配車計画に登録された貨物量や走行距離は、運行後の実績と一致するとは限りません。キャンセル、追加積込み、配送順の変更、代車への変更などを反映する必要があります。
予定値は計画の評価に、実績値は実際の運行の評価に使い、表示を分けます。実績がない箇所を予定値で補う場合は、補完した範囲を明示してください。
基本は「一つの車両・一つの走行区間」
社内分析では、一つの車両が走った一つの区間を、基本となる記録単位にする方法が考えられます。
途中で貨物を積み卸しする場合は、その地点で区間を分け、各区間を走行したときの積載重量を求めます。車両が変わる場合も、別の区間として扱います。
貨物明細と区間情報は、対応関係を持たせて管理します。ただし、貨物明細を結合した際に、同じ区間の距離や車両の輸送能力を貨物件数分だけ重複計上しないよう注意してください。
国土交通省の「物流情報標準ガイドライン 利用手引き」でも、データ連携に際して、項目の定義、型、コード値などを対応付ける手順が紹介されています。項目名が同じかどうかだけでなく、意味と単位を確認することが重要です。[1]
積載率・実車率・積載効率を区別して計算する
積載率は、貨物をどれだけ積んでいるかを見る
重量基準の積載率は、次の式で計算します。[2]
積載率(%)=積載重量÷最大積載重量×100
途中で積卸しを行えば、積載重量は変わります。「出発時の積載率」なのか「特定区間の積載率」なのかを明確にしてください。
貨物の性質によって容積基準で把握する場合は、重量基準と区別し、分子・分母の定義を表示します。
実車率は、貨物を積んで走った距離の割合を見る
国土交通省の自動車輸送統計では、実車率を次の式で示しています。[3]
実車率(%)=実車走行距離÷総走行距離×100
実車走行距離は貨物を載せて走った距離、総走行距離は空車走行を含む距離です。同じ分析範囲で集計します。
積載効率は、重量と距離を合わせて見る
同統計における積載効率は、次の式です。[3]
積載効率(%)=輸送トンキロ÷能力トンキロ×100
区間単位で計算する場合は、次の値を合計します。
- 輸送トンキロ:各区間の積載重量〔トン〕×区間距離〔km〕。
- 能力トンキロ:各区間の最大積載重量〔トン〕×区間距離〔km〕。
能力トンキロには、分析範囲に含めた空車区間の分も計上します。
公式Q&Aでは「積載効率=積載率×実車率」と整理されています。ただし、複数車両・区間を集計するときは、対象範囲と平均の取り方をそろえる必要があります。単純平均した積載率と実車率を掛ける方法では、トンキロから求めた値と一致するとは限りません。本記事では、合計した輸送トンキロと能力トンキロから算定します。[2] [3]
仮想例:途中の荷卸しと空車区間を含めて計算する
最大積載重量10トンの車両が、拠点Aで6トンを積み、拠点Bで3トン、拠点Cで残りの3トンを卸して、空車でAへ戻るとします。
以下は説明用の仮想例です。車両全体の貨物を把握できており、分析範囲はAを出発してAへ戻るまでとします。
| 区間 | 距離 | 区間の積載重量 | 輸送トンキロ |
|---|---|---|---|
| A→B | 100km | 6トン | 600トンキロ |
| B→C | 50km | 3トン | 150トンキロ |
| C→A | 50km | 0トン | 0トンキロ |
| 合計 | 200km | — | 750トンキロ |
能力トンキロは、次のようになります。
10トン×200km=2,000トンキロ
したがって、この運行の積載効率は、
750÷2,000×100=37.5%
です。実車走行距離は150kmなので、実車率は75%です。
一方、A出発時の積載率は60%です。これは出発時点の値であり、途中の荷卸しや帰路の空車走行を含む積載効率とは異なります。
このように、出発時の積載率だけでは、運行全体の状態は説明できません。
欠損・重複・異常値を処理してから比較する
計算式が正しくても、入力データに問題があれば結果は変わります。集計前に、少なくとも次を確認しましょう。
- 同じ運行や区間を重複して取り込んでいないか。
- 中止された配車計画を、運行実績に含めていないか。
- 重量と最大積載重量の単位が一致しているか。
- 積載重量が不明な区間を、空車として扱っていないか。
- 走行距離や最大積載重量がゼロ・未入力になっていないか。
- 車両変更や貨物の追加・取消を反映しているか。
- データ結合によって距離や重量が増えていないか。
分母がゼロの場合は、積載率や積載効率を0%とせず、「算定不可」などと表示します。
欠損区間を除いて集計する場合も、分子と分母を同じ区間にそろえ、除外した区間数や、把握できる範囲での除外距離を示します。欠損が残る値を、対象全体の確定値として表示しないでください。
積載率が100%を超えるなどの異常値は、自動的に100%へ丸めず、単位、貨物の重複、車両情報、実際の積載状況を確認します。
ダッシュボードは「概要・内訳・根拠」の三段階にする
ダッシュボードは、指標を一覧表示するだけでなく、数値の変化を調べられる構成にします。例えば、次の三段階で設計できます。
1.概要で全体の状態を確認する
最初の画面には、積載効率、実車率、総走行距離、輸送トンキロなどを表示します。
数値と一緒に、対象期間、対象車両、更新日時、予定・実績の区分、欠損や推計の状況を示してください。指標の横から、計算式と対象範囲を確認できるようにします。
2.内訳から改善候補を探す
次に、輸送区間、拠点、曜日、時間帯、車格などで分けて確認します。
平均値だけで順位を付けず、対象件数、物量、最大積載重量、距離、貨物の特性も併記しましょう。容積や積付けの制約がある貨物について、重量基準の積載率が低いことだけで非効率と判断しないようにします。
3.個別の運行・区間から根拠を確認する
気になる数値から、運行ID、区間、積載重量、距離、使用車両、元データへたどれるようにします。
推計、手修正、除外があれば、その理由も確認できるようにしてください。担当者が「なぜこの数値になったか」を説明できることが重要です。
分析結果は、現場の条件と合わせて判断する
積載効率が低い区間を見つけても、それだけで車両の小型化や便の統合を決めないようにします。
納品時間、温度帯、荷姿、荷卸し順序、車両の進入条件、需要の変動などを確認し、運送事業者や取引先と改善可能な条件を検討します。
国土交通省の荷主向け判断基準でも、積載効率等の状況と取組効果の把握、デジタル技術の活用、物流データの標準化などが示されています。[4]
実務では、物流企画が指標と改善目的を定め、情報システム部門がデータ連携と履歴管理を整え、運送事業者や拠点担当者が実態との一致を確認する、といった役割分担が考えられます。
運行履歴、車両位置、取引先情報などは、取得権限と利用目的を確認し、閲覧・共有できる範囲を決めます。分析用の画面に、不要な個人情報や営業秘密を表示しないことも大切です。
また、数値の改善を理由に、過積載や無理な運行、必要な休憩の削減を前提とする施策は採用しません。
まずは一つの輸送区間から集計を確かめる
最初から全社のデータを集め切ろうとせず、一つの輸送区間や拠点で、次の手順を試す方法があります。
- 分析目的と、対象車両・期間・走行範囲を決める。
- 予定と実績を分け、車両・区間・貨物を対応付ける。
- 原票と照合し、重複・欠損・単位を確認する。
- 少数の運行を計算し、集計結果と突き合わせる。
- ダッシュボードから元データへ戻れることを確認する。
- 現場と改善候補を検討し、担当者・期限・確認指標を決める。
施策の前後を比較するときは、物量、車両構成、ルート、季節などの変化も記録します。単純な前後比較だけで、変化のすべてを施策の効果と断定しないようにしてください。
社内分析の数値を行政への報告に使う場合は、対象制度の様式、定義、算定範囲との一致を別途確認します。ダッシュボードに表示できることと、そのまま提出できることは同じではありません。
配車データの活用で大切なのは、指標を増やすことではなく、数値の根拠を説明し、改善すべき条件を関係者と話し合える状態をつくることです。
本記事は、2026年10月20日時点で確認した公式資料に基づく一般的な解説です。データ構成・画面構成は実務上の提案、数値例は説明用の仮定です。個別の算定範囲や報告への利用可否は、実際の運用と対象制度に沿って確認してください。
出典・参考資料
[1]物流情報標準ガイドライン 利用手引き(国土交通省)
[2]よくあるご質問・言葉の定義(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[3]自動車輸送統計調査「用語の解説」(国土交通省)
[4]荷主(第一種・第二種)の判断基準等(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)