荷役等時間を短縮するには、積卸しを速くするだけでなく、運転者がどの作業に、どれだけの時間を使っているかを把握することが重要です。
検品や荷役への立会いなどを記録していないと、実際の負担を見落とす可能性があります。一方、施設での滞在時間をすべて荷役等時間にすると、荷待ちや休憩との区別ができません。
本記事では、倉庫管理者・現場責任者に向けて、物流効率化法における荷役等時間の基本と、作業記録を改善につなげる方法を解説します。記録表や管理手順は実務上の提案であり、法定様式そのものではありません。
荷役等時間とは、運転者が荷役・附帯業務に従事した時間
物流効率化法における荷役等時間は、運転者が荷役その他の所定の附帯業務に従事した時間です。基本的には、荷役等の開始から終了までの時間から、その間に荷役等に従事していない時間を除いて算定します。算定方法[1]
対象となる業務には、積込み・荷卸しだけでなく、次のようなものがあります。
- 貨物の品質・数量の検査
- 荷造り、搬出・搬入、保管、仕分け、陳列
- ラベル貼付け
- 代金の取立て・立替え
- 荷主等が行う荷役への立会い
- その他の通常の運転業務に附帯する業務
これらは、運転者が従事した業務として捉えます。倉庫内で行われている作業すべての時間や、倉庫作業員の延べ作業時間を、そのまま運転者の荷役等時間として扱うわけではありません。荷主判断基準の解説書[2]
荷待ち・荷役等・休憩を区別する
荷待ち時間は、荷主等の都合によって貨物の受渡しのために待機した時間です。一方、荷役等時間は、運転者が対象となる作業や立会いなどに従事した時間です。
したがって、到着・受付・荷役等の開始・終了は、別々に記録する必要があります。「受付から退場まで」を一括して荷役等時間とすると、異なる状態が混在してしまいます。算定方法[1]
荷物を直接扱っていなくても、対象になる場合がある
倉庫側が積卸しを行っていても、運転者に立会いが求められている場合や、すぐに車両を動かせる状態で待機する必要がある場合など、業務から完全に離れられず、実質的に休憩できない時間は荷役等時間に含まれます。荷主Q&A[3]
「運転者が手を動かしていない」という理由だけで、対象外にしないようにしましょう。
休憩は名称ではなく実態を確認する
業務から完全に離れることのできる休憩など、荷役等に従事していない時間は除きます。ただし、記録上「休憩」と入力されていても、立会いや即時の対応が求められていれば、実態の確認が必要です。算定方法[1]
作業の中断についても、一律に差し引くのではなく、中断理由と運転者の状態を確認します。
固縛・シート掛けは、作業の目的によって扱いが異なる
公式Q&Aでは、輸送の安全を確保するために運転業務と一体的に行う養生、固縛、シート掛けなどは、荷役等時間に含めないとされています。一方、荷主等から特別の指示を受けて行うものは、荷役等に該当します。荷主Q&A[3]
同じ作業名でも、目的や指示内容によって判断が変わるため、「固縛はすべて除外」「シート掛けはすべて算入」といった一律の処理は避けます。
なお、制度上の荷役等時間に含まれないことと、その作業が不要であることは別です。安全のために必要な作業を、時間短縮の対象として省略してはいけません。
作業内容と開始・終了を対応付けて記録する
社内の記録は、受渡しを識別する情報と、運転者の作業・状態の変化を対応付けて整理します。
| 記録項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 受渡しの識別情報 | 日付、施設、便番号、車両識別情報、入荷・出荷の別 |
| 荷待ちとの境界 | 到着、受付、荷役等の開始時刻 |
| 工程別の開始・終了 | 検品、積卸し、立会い、ラベル貼付けなど |
| 運転者の関与 | 自ら作業したか、立ち会ったか、業務から離れていたか |
| 中断・休憩 | 開始・終了時刻、理由、実際の状態 |
| 作業条件 | 貨物量、荷姿、使用機器、作業人数など |
| 算定・確認の履歴 | 算入・除外の理由、確認者、訂正内容 |
この表は社内管理用の例です。まずは必要な項目に絞り、記録の負担と確認できる内容のバランスを取ります。
開始・終了時刻は、作業名とセットで記録します。例えば、荷卸しより先に運転者が検品を始めている場合、「荷卸し開始」だけでは荷役等の開始を捉えられません。
複数の作業が同時に行われた場合も注意が必要です。同じ運転者の同じ時間帯を、検品と立会いの両方に登録しているときは、単純に足して二重計上しないようにします。
仮想例:休憩を除いて荷役等時間を算定する
以下は計算方法を示す仮想例です。実在企業の実績ではありません。
一人の運転者について、次の記録があるとします。各作業は順番に行われ、休憩中は業務から完全に離れていたものとします。
| 時間帯 | 運転者の作業・状態 | 荷役等時間への算入 |
|---|---|---|
| 9時00分~9時15分 | 貨物の数量検品 | 15分 |
| 9時15分~9時45分 | 倉庫側が行う荷卸しへの立会い | 30分 |
| 9時45分~10時00分 | 業務から完全に離れた休憩 | 算入しない |
| 10時00分~10時10分 | 貨物へのラベル貼付け | 10分 |
この場合、荷役等の開始から終了までの経過時間は70分です。そこから休憩15分を除くため、荷役等時間は次のようになります。
70分-15分=55分
工程別に合計しても、15分+30分+10分=55分です。
荷卸しへの立会い30分だけを記録すると、検品とラベル貼付けを見落とします。反対に、開始から終了までの70分をそのまま使うと、休憩を含めてしまいます。
この例は、公式の算定方法に沿って条件を設定したものです。算定方法[1]
短縮策は、時間のかかる工程と原因から選ぶ
工程別の記録がそろったら、どの作業を見直すかを決めます。最初から機器の導入を前提にせず、作業の必要性、準備、情報共有、設備・人員配置を順に確認すると整理しやすくなります。
1.運転者が行う必要のある作業かを確認する
公式解説書では、運転者が運送業務に集中できるよう、そもそも荷役等を運転者に行わせるべきかを検討することが重要とされています。荷主判断基準の解説書[2]
現場では、運転者の作業・立会いが必要な理由を整理し、施設側で担える業務や、事前に済ませられる業務がないかを検討します。変更する場合は、運送事業者や倉庫事業者と、役割・費用・実施条件を協議します。
2.荷姿と輸送用器具を見直す
パレットやカゴ車の利用、積替えの削減、扱いやすい荷造りなどは、公式資料で示されている改善策です。荷主判断基準の解説書[2]
導入時は、出荷側だけでなく納品先の設備、保管場所、回収方法なども確認します。ある拠点で短縮できても、別の拠点で積替えや仕分けが増えるなら、全体で評価する必要があります。
3.検品に必要な情報を事前にそろえる
貨物情報の事前通知や、検査を効率化する機器の活用も、判断基準に示されています。荷主判断基準の解説書[2]
実務では、品番、数量、管理単位、納品情報の不一致がないかを点検します。検品方法を変更するときは、品質管理や取引先との合意を確認し、必要な確認まで省略しないようにします。
4.作業場所・機器・人員の配置を整える
荷量に応じたフォークリフトや作業員の配置、適切な荷捌き場所の確保も改善の対象です。荷主判断基準の解説書[2]
工程の記録に加えて、機器の不足、作業場所の混雑、貨物を探す動作などを観察し、原因に対応する施策を選びましょう。
時間短縮と安全・品質を一緒に評価する
荷役等時間が短くなっても、荷傷み、誤出荷、ヒヤリハット、作業者の負担が増えていれば、改善方法を見直す必要があります。
厚生労働省の安全対策ガイドラインは、荷役作業の事前確認、安全な作業場所の確保、関係事業者の連携などを求めています。時間短縮のために、安全手順や必要な保護措置を省略しないことが前提です。安全対策ガイドライン[4]
社内では、次のような項目を合わせて確認するとよいでしょう。
- 荷役等時間と工程別時間
- 荷待ち時間、拠点での滞在時間
- 貨物量、荷姿、作業人数などの条件
- 荷傷み、誤出荷、検品差異
- ヒヤリハットや作業負担
- 導入費用と運用費用
施策前後では、対象範囲と算定方法をそろえます。物量や貨物構成が変わった場合は、その影響も確認し、時間の短縮だけで施策の効果を断定しないようにします。
欠損と法定報告の扱いを分けて管理する
開始・終了時刻が欠けている場合は、「記録がないからゼロ」と処理せず、算定できない理由を残します。他の記録で補完した場合や推計した場合は、その根拠と方法を明示します。
平均時間を示すときも、対象期間、対象施設、件数、欠損件数を併記します。少数の便の結果を、説明なく全拠点の実績として扱わないことが重要です。
公式Q&Aでは、荷待ち時間と荷役等時間は原則として分けて把握し、実態として切り分けられない場合等は、合計の「荷待ち時間等」として把握することも可能とされています。荷主Q&A[3]
ただし、社内改善用の工程別集計が、そのまま法定報告の集計になるとは限りません。法定報告に利用する際は、対象施設、計測方法、様式などの条件を確認してください。
また、委託業務の改善は、委託先の責任者と協議して進めます。請負業務では、発注者が委託先の労働者に作業方法や配置を直接指示することに注意が必要です。荷主Q&A[3]
まとめ
荷役等時間を把握する際は、積卸しだけでなく、運転者が行う検品や立会いなども確認する必要があります。休憩や対象外の作業は区別し、開始・終了時刻と、その間の作業内容を対応付けて記録します。
改善では、運転者が担う業務の見直し、荷姿の改善、事前の情報共有、設備・人員配置を検討します。数値を小さくすること自体を目的にせず、安全性と品質を確保しながら、実際の作業負担を減らしていきましょう。
本記事は、2026年10月22日時点で確認した公式資料に基づく一般的な解説です。個別の算定・報告では、最新の法令、様式、公式案内を確認してください。
出典・参考資料
[1]「荷待ち時間」と「荷役等時間」の算定方法について(国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト)
[2]荷主の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準の解説書(国土交通省掲載、第1.4版、2026年3月、14~15・30~33ページ)
[3]「物資の流通の効率化に関する法律」Q&A(国土交通省掲載、2026年3月、Q1~Q3)
[4]陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン(厚生労働省、熊本労働局掲載)
閲覧日:2026年10月22日