物流KPIを経営会議で使う|積載効率・荷待ち時間・コストを同じ粒度で見る

「積載効率は上がったのに、物流費が減らない」「荷待ち時間は短くなったが、設備投資を続けるべきか判断できない」。現場の指標を集めても、経営会議で次の行動が決まらないことがあります。

物流KPIを経営判断につなげるには、数値の変化に加え、対象となる業務、費用、サービスへの影響を合わせて示すことが大切です。

本記事では、CLO・経営企画の担当者に向けて、積載効率・荷待ち時間・コストを比較できる形に整え、投資や取引条件の見直しにつなげる方法を解説します。以下の管理表や会議の進め方は、社内運用の提案です。

1.会議で決めたいことからKPIを選ぶ

最初に決めるのは、「どの数値を報告するか」よりも「何を判断したいか」です。

例えば、配送頻度を見直す場合は、積載効率だけでなく、輸送費、在庫、欠品や納品遅延への影響も確認します。受付運用を変える場合は、荷待ち時間に加え、荷役等時間や現場の人員負担も判断材料になります。

国土交通省のKPI資料でも、企業の課題や目的に応じて指標を選ぶ考え方が示されています。代表的な視点として、生産性・費用、サービス品質、出荷ロットや配送頻度などの条件を整理しています。国土交通省「物流事業者におけるKPI導入の手引き」抜粋資料

経営会議では、次の三つを組み合わせると論点を整理しやすくなります。

見るもの指標・情報の例判断につながる論点
改善したい結果積載効率、荷待ち時間、対象業務の費用目指す状態に近づいているか
結果に影響する条件物量、配送頻度、車格、荷姿、発注締切何を変える必要があるか
同時に守る条件納品遵守、欠品、破損、作業安全改善によって別の問題が生じていないか

指標の数を増やすより、会議の決定事項に対応する組合せを選びましょう。

2.「同じ粒度」とは、比較する期間と範囲をそろえること

積載効率、荷待ち時間、コストは、もともとの記録単位が異なります。

データ元の記録単位の例主な確認事項
輸送実績車両・運行・走行区間貨物重量、最大積載重量、距離、空車区間
荷待ち・荷役等の記録施設での受渡し指示時刻、到着時刻、作業開始・終了
費用請求明細・契約・対象月対象業務、費目、計上時期、配賦条件
サービス実績注文明細・納品約束した納期、実際の納品、欠品・破損

これらを比較するには、「同じ月」「同じ対象拠点」「同じ輸送系統・商品群」など、共通の対象範囲を決めます。そのうえで、各指標はそれぞれに適した単位で計算します。

すべての指標を、無理に一便当たりへ換算する必要はありません。

また、一便に複数の出荷が含まれる場合、出荷明細に便全体の費用を付けて合計すると、費用を重複計上するおそれがあります。対応する番号を確認し、各データを適切に集計してから比較表へまとめましょう。

3.積載効率・荷待ち時間・コストの算定条件を明示する

積載効率は、空車区間を含む範囲を確認する

国土交通省の自動車輸送統計では、積載効率を次の式で示しています。

積載効率(%)=輸送トンキロ ÷ 能力トンキロ ×100

輸送トンキロは、貨物重量と、その貨物を運んだ距離を掛けて合計したものです。能力トンキロは、車両が常に最大積載重量まで貨物を載せて走った場合の輸送量を表し、空車区間を含む走行距離を用います。国土交通省「自動車輸送統計調査・用語の解説」

複数車両をまとめる場合は、輸送トンキロと能力トンキロをそれぞれ合計して計算します。

公式ポータルでは「積載効率=積載率×実車率」とも説明されています。ただし、車両ごとの最大積載重量や走行距離が異なる場合、単純平均した積載率と実車率を掛けても、上記の積載効率に一致するとは限りません。集計範囲と重み付けをそろえる必要があります。国土交通省「よくあるご質問・言葉の定義」

荷主が自社貨物の重量しか把握していない場合は、他社貨物を含む車両全体の積載状況や、帰りの空車走行まで評価できるとは限りません。会議資料には、把握できている範囲を記載してください。

荷待ち時間と荷役等時間は、定義を分ける

荷待ち時間は、到着から作業開始までの時間を一律に引けば求められるとは限りません。制度上の算定では、到着時刻・時間帯の指示の有無や、業務から完全に離れられる時間などを確認します。

荷役等時間には、運転者が行う積卸しのほか、検品などの附帯業務や荷役への立会いも含まれます。単なる施設滞在時間とは区別が必要です。国土交通省「荷待ち時間と荷役等時間の算定方法」

社内分析でも、平均時間に加えて、集計件数、長時間の待機が発生した件数、時間帯別の状況を示すと、改善対象を絞りやすくなります。

拠点平均をまとめる際は、何を表す平均かにも注意します。全受渡しの一件当たり平均を求めたい場合は、各拠点の平均を単純平均するのではなく、対象となる時間の合計を対象件数の合計で割ります。

コストは、総額と単位当たりの両方を見る

コストは、まず含める費目を決めます。輸送費だけを対象とするのか、保管費、荷役費、システム利用料なども含めるのかを明記してください。

数量当たりの費用を使う場合も、対象期間・業務をそろえます。

数量当たり費用=対象業務の費用 ÷ 対応する取扱数量

物量が減れば費用総額が下がる一方、単位当たり費用が上がる場合もあります。総額と単位当たり費用を併記することで、その違いを確認できます。

また、請求月と輸送・作業が行われた月が異なる場合は、どの期間の費用を比較しているかを明確にします。未確定費用や共通費の配賦を含む場合は、その金額と算定条件も残しましょう。

4.KPI同士の関係は、改善仮説として検証する

「配送を集約すれば積載効率が上がり、費用が下がる」といった関係は、検証するための仮説として扱います。

実際には、配送を集約することで保管量が増えたり、一回当たりの荷役作業が増えたりする可能性があります。また、積載効率と費用が同時に変化していても、運賃改定や物量の変化が影響しているかもしれません。

施策の前後を比べる際は、次の条件も確認します。

  • 物量、商品構成、繁忙期・閑散期の違い
  • 輸送距離、車格、配送先の構成
  • 運賃、燃料に関する料金、委託範囲の変更
  • 計測方法、対象施設、データ取得率の変更

条件が異なる場合は、比較可能な範囲に分けたり、条件が近い未実施の対象も参照したりして、施策の影響を検討します。

会議資料では、「数値が変わったこと」「原因として考えていること」「追加確認が必要なこと」を区別して記載しましょう。

5.仮想例:輸送費が下がっても、費用全体では増えることがある

以下は説明のための仮想例です。実在企業の実績や、一般的な改善効果を示すものではありません。

ある企業が、特定の専用輸送と関連する倉庫業務を対象に、配送頻度と受渡し時間帯を見直したとします。比較期間の長さ、対象商品、輸送量はそろえ、空車区間を含む対象車両の走行を把握できているものとします。

確認項目見直し前見直し後
輸送トンキロ120,000トンキロ120,000トンキロ
能力トンキロ250,000トンキロ200,000トンキロ
積載効率48%60%
対象施設の平均荷待ち時間40分25分
対象輸送費100万円90万円
対象保管・荷役費20万円35万円
比較対象費用の合計120万円125万円

積載効率は12ポイント上がり、平均荷待ち時間も短くなっています。輸送費は10万円減っていますが、保管・荷役費が15万円増えたため、比較対象費用の合計は5万円増えています。

この例では、「輸送費が減ったから全面展開する」とは直ちに判断できません。保管・荷役費が増えた理由や、輸送能力の確保、納品サービスへの影響を確認したうえで、継続・修正・対象拡大を決めます。

なお、この合計は表に示した費用だけの比較です。初期投資や、表に含めていない費用・事業上の効果があれば、別途評価する必要があります。

6.経営会議の資料は、数値と決定事項をつなげる

会議資料は、結果を並べるだけでなく、「今回何を決めてほしいか」まで示します。

次の表は、一つの施策を説明するための構成例です。

項目記載する内容
判断事項試行の継続、対象拡大、設備投資、納品条件の協議など
対象範囲期間、拠点、輸送系統、商品群、対象費目
結果基準値、目標、実績、前期との差
変化の説明施策内容、物量・契約条件の変化、未確認の要因
影響費用、在庫、納品サービス、現場負担、安全
次の行動担当部署、期限、必要予算、取引先との調整事項

目標値は、基準となる実績、達成時期、対象範囲とセットで示します。

欠損や推計がある場合は、実績と識別できるようにし、把握済み件数と未把握の範囲を添えます。数字が出ているだけで、全体を把握できているように見せないことが大切です。

7.CLOを中心に、部門ごとの判断をつなぐ

物流効率化法では、特定荷主・特定連鎖化事業者に物流統括管理者の選任が義務付けられています。その業務には、中長期計画の作成等の統括管理に加え、関係部門の連携体制の構築や、設備投資・デジタル化などの計画、実施、評価が含まれます。国土交通省「物流統括管理者(CLO)の選任」

社内では、例えば次のように分担できます。

  • CLO・経営企画:優先順位を決め、部門をまたぐ調整や経営判断につなげる。
  • 物流企画:KPIの定義、比較条件、改善仮説を整理する。
  • 財務・経理:費目、計上時期、共通費の配賦、投資費用を確認する。
  • 営業・調達・生産・在庫管理:納品条件、発注、生産日程、在庫への影響を確認する。
  • 現場・情報システム:記録の意味、データ品質、取得方法を確認する。

運送事業者や倉庫事業者とも、運行・作業の実態や費用負担を確認します。会議で決めた内容は、担当者、期限、次回の確認方法とともに記録してください。

8.経営管理用のKPIと法定報告を対応付ける

経営会議用の資料は、投資や運用変更を判断するために設計します。一方、法定報告では、定められた対象、項目、算定・記載方法に従う必要があります。

例えば、物流効率化法の公式案内では、荷待ち時間と荷役等時間を原則として分けて計測し、実態として切り分けられない場合等の取扱いも示しています。社内で合計時間を管理している場合も、そのまま報告に使えるかを確認してください。国土交通省「定期報告」

KPI台帳には、指標名、計算式、対象範囲、取得元、更新担当者、使用目的を記載します。経営管理用と法定報告用で条件が異なる場合は、その違いを明示すると、二重集計や説明の食い違いを防ぎやすくなります。

次の経営会議では、改善したい業務を一つ選び、積載効率・時間・費用に加えて、守るべきサービス条件と決定事項までまとめてみましょう。


本記事は、2026年10月29日時点で確認した公式資料に基づく一般的な実務解説です。法定報告への利用に当たっては、対象年度の様式・記載要領と所管省庁の案内を確認してください。

出典・参考資料

  1. 国土交通省「物流事業者におけるKPI導入の手引き」抜粋資料
  2. 国土交通省「自動車輸送統計調査・用語の解説」
  3. 国土交通省「よくあるご質問・言葉の定義」
  4. 国土交通省「『荷待ち時間』と『荷役等時間』の算定方法について」
  5. 国土交通省「物流統括管理者(CLO)の選任」
  6. 国土交通省「定期報告」

閲覧日:2026年10月29日

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