特定荷主の定期報告では、荷待ち時間や荷役等時間について、どの施設を対象に、いつ、どの運行を測ったかを説明できることが大切です。
すべての施設を同じ方法で測る必要があるとは限りません。一方で、測りやすい施設や混雑していない日だけを選んでよいわけでもありません。
本記事では、特定荷主の報告担当者向けに、施設別報告の対象、サンプリングの条件、平均時間の算出方法を整理します。
施設別報告では「対象の選び方」と「測定結果」を整理する
特定荷主の定期報告書は様式第5を使用します。その「Ⅳ.荷待ち時間等の状況等」では、計測対象の選定方法、対象施設の一覧、施設別・月別の平均時間などを記載します。
特定第一種荷主と特定第二種荷主には、それぞれの記載欄があります。両方の指定を受けている場合は、両区分について整理します。特定荷主向け手引書[1]
まず、時間の集計を始める前に、施設一覧と契約関係を確認しましょう。施設名だけで判断せず、所有・賃借・運営委託・寄託の関係を区別することが重要です。
対象施設は「誰が管理しているか」から確認する
対象施設の考え方は、次のように整理できます。
| 施設の区分 | 計測結果の報告に関する基本的な扱い |
|---|---|
| 自社が所有・賃借して管理する施設 | 原則として対象。運営を3PLなどに委託している施設も含む |
| 貨物の寄託契約先が管理する施設 | 計測対象と、サンプリングの母数となる取扱貨物重量から除外可能。ただし、寄託先との連携状況の報告は別途必要 |
| 複数の荷主が共同利用する施設 | 共同配送センターや倉庫の区画賃借などは、計測対象とサンプリングの母数から除外可能 |
| 上記以外の取引先施設など | 当該荷主の計測結果の報告対象外。ただし、任意の把握や関係者との連携は可能 |
自社が賃借し、運営だけを委託している倉庫と、寄託契約に基づいて貨物を預けている他社管理の倉庫は、扱いが異なります。「外部倉庫だから対象外」と一括して判断しないようにしてください。
また、計測対象から除外できることと、荷待ち時間等の短縮に向けた取組が不要になることは同じではありません。特定荷主向け手引書・37ページ[1]
サンプリングは施設・期間・運行を分けて設計する
施設は取扱貨物重量を基準に選ぶ
手引書では、特定第一種荷主・特定第二種荷主の区分ごとに、年度の取扱貨物重量の半分程度以上を把握できるよう施設を選ぶとされています。
これは「施設数の半分を選ぶ」という意味ではありません。寄託倉庫や共同利用施設を母数から除外する場合は、その条件を踏まえて取扱貨物重量を整理します。
施設の選定では、取扱貨物重量の多さに加え、過去の苦情や滞留の状況など、改善のために実態を把握する必要性も考慮します。選定理由を残し、結果が良く見える施設だけに偏らないようにしましょう。特定荷主向け手引書・37ページ[1]
期間は四半期ごとに連続した5営業日以上を選ぶ
期間をサンプリングする場合は、四半期ごとに連続した5営業日以上を選定します。
その際、前年度の月別売上を踏まえ、各四半期で最も売上金額が低いと見込まれる月以外から選びます。この月の判断は、施設ごとではなく事業者全体の売上金額に基づいて行っても構いません。
また、貨物の受渡しがある営業日を連続して5日選ぶ考え方です。受渡しのない日があらかじめ分かっている場合は、受渡しのある営業日を順に選びます。ただし、予定していた日に予期せず受渡しがなかった場合まで、計測期間の変更が求められるわけではありません。
稼働期間が限られる施設では、受渡しのない四半期の報告は不要とされています。特定荷主向け手引書・40ページ[1]
選んだ期間の運行は、原則としてすべて把握する
対象施設・対象期間を決めた後は、その期間中の全運行を把握することが原則です。
郵便物や一定条件の宅配便など、除外できる運行もあります。ただし、記録が取りにくいという理由だけで、任意の運行を除外できるわけではありません。除外する場合は、手引書の条件と自社の実態を照合します。特定荷主向け手引書・40ページ[1]
測定前に、時刻と作業の定義をそろえる
同じ「到着時刻」という項目でも、施設への到着、守衛所での受付、バースへの接車を指していることがあります。
記録を集める際は、少なくとも次の情報を対応付けておくと確認しやすくなります。以下は社内管理用の整理例であり、すべてが法定様式の必須記載項目という意味ではありません。
| 管理項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 施設・受渡しの識別 | 施設番号、日付、便番号など |
| 荷主区分 | 第一種・第二種のどちらの受渡しか |
| 指示・到着の記録 | 指定時刻や時間帯、到着、受付 |
| 作業の記録 | 荷役等の開始・終了、作業内容、立会いの有無 |
| 休憩などの記録 | 時間と状況、算定上の扱い |
| 根拠・訂正履歴 | 取得元、抽出日、修正内容、確認者 |
荷待ち時間は、到着から荷役開始までを一律に引けばよいとは限りません。時刻指定の有無や休憩の状況などによって、算定上の扱いが異なります。
荷役等時間についても、倉庫内の全作業時間をそのまま集計するのではなく、運転者の作業や立会いなど、制度上の対象を確認してください。物流効率化法Q&A[2]
平均時間は「施設ごと・月ごと・受渡し1回当たり」で計算する
施設別の報告では、1回の受渡しに係る平均時間を分単位で整理します。
基本となる計算は次のとおりです。
平均荷待ち時間=対象となる荷待ち時間の合計÷対応する受渡し回数
平均荷役等時間=対象となる荷役等時間の合計÷対応する受渡し回数
荷待ち時間と荷役等時間を分けて把握できる場合は、それぞれを記載します。実態上、切り分けが難しい場合には、合計を「荷待ち時間等」として記載する方法が認められています。
期間をサンプリングした場合は、その計測期間が属する月の欄に結果を記載します。測っていない月に、他月の数値を転記したり、ゼロを入力したりしないようにしてください。未計測月の表示方法は、使用する様式や電子申請の案内に従います。特定荷主向け手引書・44、48ページ[1]
日別の受渡し回数が異なる場合、日別平均を単純に平均すると、受渡し1回当たりの平均と一致しないことがあります。元の合計時間と受渡し回数から再計算できるようにしておきましょう。
仮想例:100回の受渡しを集計する
以下は、計算方法を説明するための仮想例です。実在企業の実績ではありません。
ある施設で、条件に沿って選定した同一月内の5営業日について、対象となる100回すべての受渡しを計測したとします。欠損や報告省略の対象はないものとします。
| 項目 | 集計結果 |
|---|---|
| 受渡し回数 | 100回 |
| 荷待ち時間の合計 | 2,400分 |
| 荷役等時間の合計 | 4,200分 |
| 平均荷待ち時間 | 24分 |
| 平均荷役等時間 | 42分 |
| 1回当たりの平均合計時間 | 66分 |
この例では、荷待ち時間だけを見ると24分ですが、荷役等時間を含めると66分です。短時間であることを理由に報告を省略できるかどうかは、荷待ち時間だけでは判断できません。
報告省略は「平均1時間未満」などの条件を確認する
手引書では、施設ごとに1か月間、またはサンプリング期間を通じた1回の受渡しに係る荷待ち時間等の平均が、1時間未満の場合に報告を省略できるとされています。
ここでの条件は、「1時間以内」ではなく「1時間未満」です。平均60分ちょうどの場合、この短時間による省略条件には該当しません。また、荷待ち時間と荷役等時間の合計で確認します。
確認方法には、計測のほか、トラック事業者や作業員へのヒアリングも認められています。ただし、確認せずに短時間と推定することとは異なります。
別の省略条件として、手引書に示された業界特性等により荷役等時間の短縮が困難な場合があります。こちらは、荷待ち時間まで自動的に省略できるという意味ではありません。
省略する施設・運行がある場合は、所定の付表に識別番号や省略理由を記載します。時間の報告省略と、定期報告書そのものの提出不要を混同しないようにしてください。特定荷主向け手引書・41、45、49ページ[1]
寄託倉庫は、計測と連携状況の報告を分けて考える
寄託先が管理する施設を計測対象から除外した場合でも、寄託先との連携状況を記載する項目があります。
ここでは、荷待ち時間等の短縮に向けて、どのような協議や情報共有を行っているかを整理します。
寄託先が多数ある場合、手引書では、主な契約先上位5者と、書面で物流効率化に関する提案または改善要請があった寄託先に絞って記載してよいとされています。上位5者は、預けている貨物量または契約金額の大きい順で判断します。
寄託先施設の時間に関する参考情報は任意項目です。把握していない数値を作るのではなく、確認できている情報を記載します。特定荷主向け手引書・51~52ページ[1]
提出前に確認するチェックリスト
集計後は、数値だけでなく、その数値を説明できる記録がそろっているかを確認します。
- 施設の所有・賃借・運営委託・寄託の関係を区別しているか
- 第一種・第二種の区分ごとに対象施設の選定根拠を説明できるか
- 計測期間が四半期ごとのサンプリング条件に沿っているか
- 対象期間中の運行に、理由のない除外や記録漏れがないか
- 合計時間と受渡し回数から平均値を再計算できるか
- 欠損、未計測、実際のゼロ、報告省略を区別しているか
- 省略した施設・運行と、その理由を整理しているか
- 寄託先との連携状況を確認しているか
欠損がある場合は、まず原記録や運送事業者への確認によって補えるかを検討します。補えない場合は、欠損範囲と理由を残し、未確認の値をゼロとして扱わないことが重要です。
まとめ
荷待ち時間等の施設別報告は、施設ごとの平均時間を並べるだけの作業ではありません。
対象施設を選んだ理由、サンプリングの条件、時間の定義、平均値の分母、報告を省略する根拠を、一つずつ説明できる状態にすることが大切です。
施設台帳と計測記録を対応付けておけば、担当者が変わっても集計方法を引き継ぎやすくなります。提出後も同じ条件で状況を確認し、荷待ち時間等の短縮に向けた改善につなげましょう。
本記事は、2026年10月22日時点で確認した公式資料に基づく一般的な解説です。個別の契約関係や報告省略の適用に不明点がある場合は、荷主事業所管省庁に確認してください。
出典・参考資料
[1]経済産業省『「物流効率化法」対応の手引書 特定荷主編 第1.1版』2026年4月、36~52ページ。
[2]国土交通省掲載『「物資の流通の効率化に関する法律」Q&A』2026年3月、Q1・Q2。
閲覧日:2026年10月22日